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アフターコロナの観光を考える|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム023

2021年10月1日付で全国に発出されていた緊急事態宣言が解除された。岸田新政権の誕生とともに、やっと、やっと、新しい日本へ再び歩み出した。最新の報道では週末集中にならない形でGo To事業もほどなく再開されそうな声が高まってきた。

但し、何度も言われているように、観光や旅館・ホテルのあり方や使われ方は今まで通りではなく、むしろ今までと全く違う新しいステージが求められ、今度はいかにそれに適合していくか、そのスピードやクオリティが問われるようになっていく、と予測されている。

まず大きなポイントが「非接触」「非対面コミュニケーション」をデジタル化で対応する「旅行DXへの対応」だろう。

例えばAという観光エリアを5時間で、オススメの見どころに関してさまざまな希望を聞いた上でAIが旅程を組み立てて提案する、といったことは、実はすでにWEBサイト上でリアルタイムな表示が可能になっている。

こうした仕組みと同様に、自館のWEBサイトから、お客様に最適な滞在プランや周辺観光プランを組み立てて、客室タイプや食事内容、会場、時間、スタイルなどもワンストップで表示され、チェックインするとそのスケジュール通りにサービスされる、といった仕組みも意外に早く実現するのではないか。

すでにお客様のスマホを活用して自館の館内施設を紹介したり、大浴場の混雑状況をリアルタイムで知らせたりするシステムもあり、今後こうしたサービスにフレキシブルに対応できる施設は生き残り、対応できない施設との二極化が進む予測もある。

また、全般的には単純な回数やコストよりも、旅行回数を減らしても一度の旅行満足度を重視する「旅行の贅沢化」もアフターコロナの旅行を語るキーワードとしてよく見かける。

重視されるのは「プライベート」や「ゆとり・非密接」、「開放感」といった要素であるため、もしインバウンド需要が回復するとしても新型コロナウイルスが流行する前の「都市型」ではなく、地方、リゾート立地、古き良き日本文化、といったものがより求められるようになると言われている。

そういう意味で例えば1週間、といったレンジは難しいかもしれないが、ワーケーションなどを併せて1泊2日から2泊3日などの連泊利用の国内客も増えていく可能性があるし、同様に「1泊2食設定原則」も昔のことになっていくのかもしれない。

また、なるべく他のお客様と触れ合いたくない、という志向が高まるため、客室数の多い施設では1フロアあたりの客室数を制限したり、フロア単位で貸し切り提供したり、といったコントロールも必要になってくるかもしれない。

売店なども、例えば朝市のように、そこに会話があったりする温かみが旅の魅力の一つではあるものの、そこで「買う」よりもショーケースのように「見る」「試す」だけで、オーダーは客室にてスマホから、決済もクレジットカードで、オーダーした商品はチェックアウト時にフロントで手渡し、といった仕組みも十分考えられる。

そうした中で、いかに少ない人数でこうしたオペレーションを可能にするか、と考えるとやはりデジタル化によって改善できることは積極的に採り入れていくことが必要となる。

多くの方々がご存じの通り、日本はすでに人口減少の局面にある。リゾート立地、即ち人口密度の低いエリアに建つ施設も多い中で、いかにそうした人材を雇用するか、という課題は今後よりその重要性を増す。

そう考えると、以前のように「人力で対応」「人で解決」という考え方は相当なコストを要し、自ずと限られた高料金設定の施設に限られていく。例えば公的なサポート、つまり補助金を活用しながら、デジタル化できることは躊躇なくデジタル化していく。そんな柔軟な考え方が求められる。

ただ実際の所、これからの観光がどうなっていくのかは、誰にも分からない。

そういう意味では、常にアンテナを高く情報への関心を高め、その空気や潮流を常にインプットしておくことが重要で、且つ、それをベースに時には大胆に決め、取り込んでいくようなフレキシビリティも大切になる。

やっと、少し明るさが見えてきた中で、なかなか一気には戻らないとは思うものの観光自体がこのまま廃れることは考えられない。

そんな中で、いかにきちんとしたビジネスにしていくか。そのポイントはやはりお客様をきちんと見て、きちんと何を求められているかを肌感で理解することと思う。

そうした本質的なマーケティング発想こそ、新しい観光時代を生き抜いていくポイントではないだろうか。

※2021/10/28公開の記事を転載しています


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