シリーズ企画 接客現場の「こんな時どう答えればいいのですか?」- 第3回(最終回)
接客現場では、ことばに詰まる質問を受けることがあります。もっと上手に答えられないかと向上心にあふれて考えてしまう人もいます。後輩から質問されて説明できないこともあります。
そんな接客現場の悩みに耳を傾け、受け答えの考え方やことばのヒントをお伝えします。
接客ミーティングの素材として、現場指導の教材として、ご活用ください。今回は3回シリーズの最終回です。
第3回〈どう言えば印象よく聞こえますか?編〉
Q . お見送りする時に雨が降っていると、「今日は雨が降っているんですね。」と、少しがっかりされて言われることがあります。どのように言えば印象よく聞こえるでしょうか?
A . マイナスイメージの話題を明るく転換する方法を知っておきましょう。それには、期待や願望を述べることです。
「はい、わたくしも今日は天気予報が外れるとよいのにと思っておりました。」
「今日はどちらかにお出かけのご予定でいらっしゃいますか?・・・そうでございますか。もう一度、雨が上がるようにお祈りしなおします。」
「天気予報では、○時には、雨は上がるようでございます。」
このように、ご旅行中のお客様に気持ちを重ねたことばを選びましょう。雨の日にはぜひ何時に雨が上がりそうかなどのピンポイントの情報を確認しておきたいものです。
Q . 自分が知らないことを聞かれた時に答えにつまってしまいます。「わからないので、調べて参ります、少々お待ちくださいませ。」と言うと、「自分で調べるから大丈夫です。」と言われてしまうこともあります。どうすればいいでしょうか?
A . 「○○のことでございますか?」と質問の内容をきちんと復唱しましょう。シンプルな質問では、そのまま調べれば良いのですが、お客様は加えて、なぜ知りたいのか、何が特に気になっているのか、をお話しくださるかもしれません。
そうすれば、一度に丁寧に調べたり、聞いてくることができます。外国人スタッフの皆さんは、誰かに代わって答えてもらうのでも構いません。早く、適切な答えを用意することが重要です。
さて、復唱した次には、このように申し上げてみましょう。「申し訳ございません、〇〇については、勉強不足でございます。」「よく知っているものがいるかもしれませんので、聞いてまいります。」あるいは、「詳しく調べてまいります。」とお伝えします。
また、返答に添えて、「・・・だそうでございます。○○さまにご質問いただいて、とても勉強になりました。ありがとうございます。」と伝えましょう。
Q . お手伝いをしたり、お届け物をすると、お客様から「忙しいのにすみませんでした。」などと言われることがあります。「いいえ、大丈夫です。」と言ってしまいがちですが、他の言い方はありますか?
A . 「とんでもないことでございます。」ということばもありますが、「お気遣いありがとうございます。」とお客様のことばにお礼を言うのも、さらに良い印象です。
加えて、「またいつでもお声がけくださいませ。」と締めくくることで、お客様に喜んでいただけてよかったという気持ちや、ホスピタリティが表現されます。
Q . お子さまのお名前を伺ってお呼びかけしたいのですが、「お名前は何とおっしゃるのですか?」と尋ねたら、「なぜ聞くんですか?」と返されてしまいました。お子さまの名前は聞いてはいけないのでしょうか?
A . まず、お名前を尋ねてはいけない、ということはありません。呼びかけられたくない、というお客様は極めて稀なことだと思いますし、「なぜ、聞くんですか?」と返された方は、名前を何かに記録したり、メッセージに書いてくれるのかしら、と思ったのかもしれません。
そこで、「お子さまをお名前でお呼びかけしたいのですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」と、なぜ伺いたいのかをはっきりとして、遠慮がちにお尋ねしていることが伝わる表現を用いてみると、ストレスなくお尋ねできるようになるはずです。
Q . お客様から、「お世話になります。」と言って、お心付け(チップ)をいただくことがあります。どのようにお礼を言えばいいでしょうか?
A . お心づけやチップは謙虚に、そして心からの感謝を表現することが大切です。
「お気遣いありがとうございます、お気持ちだけで十分でございます。」と、とてもうれしいという思いを込めて、一度は遠慮をするのが日本的です。お心付けをご用意くださるお客様の中には、その謙虚さの表現に美しさを感じていらっしゃる方もいます。
お客様が、「少しだけですから、どうぞ受け取ってください。」と重ねて言われたら、「それでは、お言葉に甘えまして、頂戴いたします。」と言い、その場に他のお客様も同席している場合は、その方々にも「(みなさま)ありがとうございます。」とお礼を述べましょう。
また、ご案内だけで、夕食時には別の担当がつくことがわかっている場合は、「・・・・申し遅れました、○○さまの夕食は他の係が担当いたします。お夕食の席でご挨拶させていただくかと思いますが、お心遣いをいただきましたことを申し伝えます。」と、重ねてお気遣いを頂かなくてよいように申し上げておきましょう。
Q . 料理提供の際に、冷酒のふたが開けられずに焦ってしまいました。そのような時のことばを教えてください。
A . お酒や焼酎のふたが開けにくい場合は、「失礼いたしました。まれに開けにくいふたのことがございます。新しいものをお持ちいたします。」とお伝えします。
ワインの場合は、「こちらがご注文の〇〇でございます。不調法でございますので、一度お下げして開けてまいります。よろしいでしょうか?」と申し上げてみましょう。
このように言うと、お客様が開けてくださるとおっしゃることがあります。その場合は、「おそれいります。(開いてから)・・・ありがとうございました。」と言います。
Q . お手荷物のお手伝いを申し出ると、「大丈夫です。」とか、男性のお客様などは「重いからいいですよ」とおっしゃることがあります。どのように返事をすればよいのでしょうか。
A . 自分でお持ちになりたい場合もありますので、無理にお持ちしようとする必要はありません。ただ、ご遠慮されている場合もあるのですから、もう一度だけ、別の申し出をしてみることをお勧めします。
「かしこまりました。何かお手伝いできることはございますか。」とお伺いしてみましょう。それでもご希望がない場合は、「おそれいります。」とお返事します。
Q . お客様同士のお話が盛り上がっていて、お伝えしたいことがある時、どのようにしたらよいでしょうか。また、お伺いしたいことがある時にも、どうしたらよいでしょうか。
A . お客様の話を遮るのはよくありません。せっかく楽しくお話をされているので邪魔になってはいけません。
一つの方法は、後からでもいいかどうか考えてみて、一旦お伝えせずに下がる、という方法です。少しお待ちして、それでも話しかけるタイミングがなければ、にこやかに会釈して下がります。
どうしても、このタイミングでお伝えしたいというような場合、例えばお鍋の火をおつけしたので召し上がり方をお伝えしておきたい、などという場合は、まず、お話しかけしやすそうな方を見つけましょう。アイコンタクトをして、気づいてくださったら、「おそれいります、〇〇についてご説明(お伺い)したいことがございますが、よろしいでしょうか?」とお声がけします。
お伝えし終わったら、「みなさまにもお伝えくださいませ、ありがとうございます。」と申し上げましょう。
みなさまにお伝えしようと思わず、どなたかご代表の方にお伝えしておく、あるいはお伺いしておく、ということがポイントです。
Q . お客様と話が弾んでしまった時や、お客様のお話が続いてしまっている時の切り上げ方、気持ちのよい区切り方はあるでしょうか?
A . お断りをしなくてはいけない場合の鉄則は、お礼から、ということです。「お話を聞かせていただき、ありがとうございます。」
それから、お伺いの形で希望を伝えます。「お話の途中ではございますが、お料理のこと(玄関のこと、など)が気になっておりまして、一旦失礼してもよろしいでしょうか?・・・おそれいります。」と申し上げてみましょう。
ここでは、他のお客様のことがありますので、などと直接的な表現はせずに、お料理のこと、玄関のことなどと大まかな理由を伝えて、お客様にイメージしていただくようにします。
・・・他にも、ことばを探してしまう場面がきっとあると思います。そのように感じることは、お客様のことを思っている優しい気持ちがあるためです。
職場で質問を出し合って一緒にことばを探してみるのも、よい勉強の機会、仲間の優しい思いに触れる機会になると思います。
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