見出し画像

「ガストロノミーツーリズム」って言葉の響きが重たすぎやしないか?|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム044

◯旅館ホテル・観光にかかわる、老若男女様々なプランナーによるリレーコラムです。

「ガストロノミーツーリズム」を正しく説明しているものを以下の①~③から一つ選べ。

① ドイツの哲学者フリードニヒ・ニーチェの思想を継承した哲学者ガストロノミーが「人生は旅だ」として提唱する倫理観の総称
② 石油・天然ガスなどのエネルギー資源を全世界で平等かつ均等に分配し世界共通の利用基準を設けることで枯渇性資源の活用を最大限効率化しようとする国連の声明
③ ガストロノミーとはフランス語で「美食学・美食術」を意味し、 その土地の気候風土が生んだ食材、習慣、伝統、歴史などによって育まれた食を楽しみ、旅をすること

はい。ということで、いきなり大学入試センター試験のような選択式問題から始まりましたが、皆さん答えはお分りでしょうか? …そう、答えは「③」ですね。

本コラムの読者層なら分かって当然の問題だと思いますが、仮に、まっさらな状態で「ガストロノミーツーリズム」という言葉も単語の意味も知らずにこの問題が出されたらどうでしょう。

個人的には、何となく哲学チックな感じがするので、①あたりを選んでしまいそうなものです。

何が言いたいかといいますと…「ガストロノミーツーリズム」っていう言葉の響き、重いし仰々しすぎるだろ。ということです。

もちろん専門用語としての学術的な?経済的な?役割があって、実際の旅行者に向けて積極的に使う用語でないことも承知しています。ただ色々調べていくと、自治体や地域がガストロノミーツーリズムを旅行者に推進するとき、ガストロノミーツーリズムに代わる旅行者向けのキャッチーな呼称がなさそうなんです(もしもあったら、ぜひ教えてください)。

例えば地方自治体が「○○地域のガストロノミーツーリズムを楽しもう!」と謳ったとして、それを目にした、もしくは耳にした、何も知らない旅行者は「え…ガストロノミ…なに?」と、重たい響きに何となく一歩引いてしまって、詳細を知ろうという気持ちが萎えてしまう気がします。

勘違いしないでいただきたいですが、僕自身はガストロノミーツーリズムという旅のスタイルはすごくいいなと思っています。

美味しい料理と素晴らしい景色、食と旅を結ぶ新たな旅のスタイルとして人気を集めているガストロノミーツーリズムは、いわば舌と心を満たす冒険。

一番の醍醐味は、やはりその土地ならではの特産品や料理を堪能すること。海外に目を向けると、例えばフランスのワイン地域を巡るツアーや、メキシコのテキーラ醸造所を訪れる旅。食材や製法の現場にあるストーリーに触れるチャンスです。

また、新しい土地を訪れたら、フードマーケットへ足を運んでみるのもガストロノミーツーリズムに通ずる楽しみ方の一つ。

そこには地元の食材や調味料、お菓子などが並び、現地の人々が日常的に楽しんでいる味を体感できるうえに、お土産にも最適です。タイのバンコクの屋台で出会うエキゾチックなスパイスや、スペインの国境の市場で手に入れられる新鮮なシーフードは、旅の記憶をいつまでも鮮やかに彩ってくれるでしょう。

さらには食事だけでなく、その土地の美しい風景を楽しむこともガストロノミーツーリズムの魅力。イタリアのアマルフィ海岸でオーシャンビューを眺め、楽しみながら新鮮なシーフードを堪能したり、スイスの山々に囲まれたレストランでチーズフォンデュを楽しんだりすることで、食べる喜びと美しい自然が融合した素晴らしいひとときを過ごすことができます。

あれ?めちゃくちゃいいじゃないですか、ガストロノミーツーリズム。心と舌を満たす最高の冒険。美味しい料理と文化の融合。食の世界を巡る魅惑の旅!

…ただ一つ。やっぱりこれだけガストロノミーツーリズムガストロノミーツーリズム書いたり口にしてみたりしても、ガストロノミーツーリズムという言葉に対しての拭えない違和感!

いや、これしっくりきてないの自分だけなのか…?

一方で、「マイクロツーリズム」もコロナ禍を経て注目を集めてます。

マイクロツーリズムとは、自宅から1時間~2時間圏内の地元または近隣への宿泊観光や日帰り観光のこと。

「マイクロツーリズム」は「ガストロノミーツーリズム」と同じ言葉の構成なのに、こっちは何となくスッと頭に入ってくる。そこまで難しい単語を使ってないからなのか、だとすると、ガストロノミーツーリズム違和感問題の主犯はやはり「ガストロノミー」なのか…。

そして、マイクロツーリズムを調べていたら、星のリゾートさんのWebサイトでこんなページを見つけた。

星のリゾートの「マイクロツーリズム」 ご近所旅行のススメ

…いい!わかりやすい。

「マイクロツーリズム」=「ご近所旅行」はわかりやすくていいネーミングだ。ページのテイストや情報のまとめかたも丁寧で旅行者の目線に寄り添っている。

寄り添っている…そうか、ガストロノミーツーリズム違和感問題の本質は、呼称が旅行者に寄り添っていない!ということではないか。

確かに旅行や観光は、経済的・文化的な側面も強く孕み、ある意味ではただの生活者の娯楽ではないのかもしれない。

しかし、ガストロノミーツーリズムよ。どんなに奇を衒ってもお高く留まってみても、その主役は旅行者であり私たちなのだ。

もう少しだけ旅行者に寄り添ったネーミングになってみても、いいんじゃないかい?シンプルに「美食旅行」とか、ちょっと捻って「グルメ通リズム」とかさ…ダメか。

さて、あまりにも主観的な意見を乱文乱筆してしまい申し訳ない。が、このコラムはあくまで「独り言」だ。ぜひとも聞き流していただけたら幸いである。

※2023/08/31公開の記事を転載しています


毎週配信をしているリゾLABのメールマガジン「リゾMAGA」。新着記事の紹介、旅行・観光関連のデータやプレスリリースなど、旅館・ホテル業界に関わる方におすすめの情報を届けます。

▶メルマガ登録はこちらから


記事を最後までお読みくださり、ありがとうございます。励みになりますのでコメントいただくのも嬉しく、今後の参考になります。|また、業務ご相談を随時承っております。リゾLAB編集部を兼ねるエイエイピー観光戦略推進部の事業紹介サイト「伴走支援サイト」をご覧ください。