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時代を先読みして観音山フルーツガーデンが展開する、高品質なフルーツを核とした新・付加価値ビジネスとは

フルーツ王国として名高い和歌山県で100年以上の歴史を重ね、品質の高い果実や加工品の生産と販売を行うだけにとどまらず、観光客に向けた収穫体験やフルーツパーラーの運営など、多方面へのチャレンジを続けている観音山フルーツガーデン。
2018年に直営のフルーツパーラー1号店を出店したのを皮切りにコロナ禍をものともしない急成長を遂げている、そのユニークな新ビジネスが目指す未来像について、観音山フルーツガーデン会長の児玉典男(ふみお)さんにお話をお聞きしました。



1.農園として100年を超える歴史を重ねる中で、販売面を強化してきたのにはどのような狙いがありましたか

観音山フルーツガーデンは明治44年に開業した農園ですが、二代目の祖父の時代にはすでに満州や朝鮮へのみかんの輸出を始めていましたので、もともと生産者でありながらもビジネスマンの視点を持つというDNAがあり、それが今も息づいているのかもしれません。

生産者はつねにそれを買って食べるお客様の立場を忘れてはいけない。そして一年を通してお客様を確保していくには、生産だけでない新しい手法が必要だという強い想いが、この30年、観光客に向けた収穫体験やネットでの自社販売、パーラーの運営など、B to BからB to Cへ、第一次産業から第六次産業へという転換に向けた事業展開を牽引してきたのだと思っています。

2.そんな想いを具現化するのに、もっとも大きなきっかけとなったのは何でしょうか

それは間違いなくインターネットですね。
この画期的なイノベーションによって、それまでに重ねてきた様々な取り組みが一気に形になりました。

平成初期にはまだネットはビジネスとしてあまり一般化していませんでしたが、「これからは情報化・国際化が最大のカギになる」と直感し、平成元年には自らパソコンをはじめ、まだ黎明期のネットに自社サイトを立ち上げることとしました。

最初の頃はホームページを通じた売上は年間10万円ほどとごくわずかなものでしたが、30数年を経てそれが年間6~7億の売上へと成長拡大し、今は生果実のほぼ100%をサイトで販売する体制となっています。

ネットが登場する以前を思い起こせば、生産者は商品を売り手に渡した時点で仕事は終わりでした。

しかし自社サイトで果実を直販するようになってからは、作り手の私たちがお客様と直接話ができる、感想が聞ける、笑顔が見えるという双方向の交流が実現しました。

「お客様と直接つながっている」。その実感と手応えは、販売はもとより生産においても私たちの大きなモチベーションとなっています。

3.フルーツパーラーの1号店を2018年4月にオープンしましたが、それからわずか5年で都内2店舗を含めた計8店舗を出店されています

お客様との関係性をさらに深めて、声や反応を聞くだけでなく直接喜ぶ顔が見える事業ができないかと推し進めたのがフルーツパーラーです。
そもそも和歌山はフルーツの国として知られていますが、あくまでも生産にとどまっていて、自慢の果実をその場で味わえる環境が少なかったため、新たにその「場」を提供しようと考えたのがその始まりでした。

生産者がもっとお客様側に歩み寄っていく姿勢を具現化したい。幸いなことにそんな想いで立ち上げた1号店(総本店)が大きな注目とご好評をいただいて、和歌山以外の地域からも「ウチでもやらせてもらえないか」という多くの声を頂戴したことで、直営店以外のフランチャイズ店を展開する運びとなったわけです。

4.ちょうどコロナ禍の時期にあたりましたが、事業推進への影響はいかがでしたか

コロナ禍で新事業進出を進めたことについては、後から考えれば「よくやったな」というのが正直な気持ちです。
パーラーの新事業展開はもちろん、銀座店の出店に対しても周囲からは大きな反対がありました。

確かにどれも大きな挑戦ではありましたが、それまでにネット販売を通じて蓄積してきたお客様リストを見ると、そこにはすでに都内で商売ができるだけのマーケットがありました。さらに早期からネット事業を展開してきた経験とノウハウの蓄積によって、そのお客様にダイレクトにアプローチする手段を持っていることが私たちならではの強みだと捉えていましたので、そこに勝算はあることは確信していました。

また首都圏のお客様から直接「東京にぜひ店を出してほしい」という声をいただいたことも、その判断を後押ししてくれる強い力になりました。

銀座店外観

コロナが企業運営にとって大きな影響を及ぼしたことは言うまでもありません。しかしその一方で「皆が右を向いているときは左を向こう」という経営者としての考えもありました。

ついついマイナス面ばかりが注目されがちですが、コロナの影響によって家賃相場が下がったり、有用な人材が手に入りやすくなったなど、経営面ではプラスの側面もあったことは事実です。

大切なのはリスクを取ることを必要以上に恐れないこと。先々に成功する事業は、計画当初は皆に反対・無視されるのが常だと思っています。

銀座店内観

また銀座出店後は「銀座に農家直営のフルーツパーラが誕生」というインパクトのある話題性によって、多くのマスコミも取り上げてくれたことが大きな力となったことも忘れてはいけません。

この出店以降、様々な業界の方からフルーツ農家の取り組みとして斬新だという評価をいただくことも多くなりましたが、しかしこの事業は農家の皆さんなら誰もが実現可能なビジネスです。

多くの方々に支えられてこうした事業を展開させていただいている私たちとしても、各地でのセミナーなどに積極的に参加するなど、農家の未来を拓く新たなビジネスモデルとして全国の方々にぜひ広く知っていただけるよう努めているところです。

5.現在フランチャイズ店はどのように展開・運営されているのでしょうか

現在は直営店3店、フランチャイズ5店という構成になっているのですが、フランチャイズ店のオファーの多くがフルーツの産地からのものだったというのも注目すべきポイントです。

私たちの本拠地である和歌山はフルーツの品質はもちろん、果実の多彩さにも恵まれている地域で、みかんやレモンを始め年間を通じて新鮮な果実がほぼすべて地元で入手できるのですが、他のフルーツ王国では事情が異なります。

特に多くの地域では柑橘類などの冬の果実が足りないため、年間を通じてフルーツを販売することが難しいというのが実情。要するに地域によってそれぞれが不得意な季節があり、それが年間を通じた事業の穴となってしまうわけです。

観音山フルーツパーラーは高品質な柑橘類を提供できることが売りですので、例えば広島や岡山の店などでは地元の高品質フルーツを使用しながら、生産物が不足する季節にはこちらからフルーツを適宜供給するというスタイルを採り、地域の特性を生かしつつも「皆で仲間意識を持って安定した運営を行う」という協力体制を敷いています。

ただブランド価値にはとことんこだわっていて、直営店とフランチャイズ店で提供する果実は異なれども「素材そのものの品質で他と差別化する」という根底の想いは共有しています。

運営ノウハウについても基本的にはこちらから提供し、各店で新しいやり方が見つかればそれを全店に発信するという意識が根付いています。
そんな良い関係性を築きながら、いわば「確固たるブランドと、ゆるやかなフランチャイズ」を重視した展開を行っていると言うことができるのではないでしょうか。

<直営とフランチャイズによる、展開フルーツパーラー計8店舗の構成>

総本店・南紀田辺店・銀座店・和歌山店・神戸店・岡山店・尾道店・南青山店

6.今後計画している取り組みや、事業の展望について教えていただけますか

現在のパーラーのお客様は、和歌山県以外の方が約7割を占めています。
そんな中で私たちが特に力を入れているのが銀座店。

東京の一等地に店を構えているその影響力はことに大きく、松屋銀座やJALといった大手企業とのコラボや、銀座ミツバチプロジェクトとの協力による新商品開発、地元のテーマパーク・アドベンチャーワールドとの協業展開など、今もさまざまな可能性が広がり始めています。

また有楽町にある和歌山のアンテナショップでもフルーツをキーワードにしたイベントやキャンペーンを開催するなど、「和歌山」の知名度をもっと向上させていきたいという想いも強く、新たにロンドンバスを絡めた新事業などの計画も進めているところです。

さらに収益という面で見ても、銀座店はその土地柄や客層から地元・和歌山とは比較できないほどの高単価販売が可能になっていることから、パーラー全体の業績伸展に対する大きな貢献が期待できます。

もちろんこれはパフェの高い品質と幅広いお客様からの支持に裏付けられたものですので、まずは直近の課題として、生産者のノウハウをふんだんに活用した「本物」をとどけ・広めることを大切に、銀座店をフラッグシップとしてさらなるブランド価値の向上を図っていきたいと考えています。

こうして少しずつ確実に地に足をつけてブランドを強固なものとし、その成果を地元の和歌山に逆輸入することができたら、フランチャイズ展開としては理想的なのではないでしょうか。


和歌山県 観音山フルーツガーデン


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