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時代に先駆けて、30年前から環境貢献活動とSDGsに取り組む【伊勢志摩国立公園/鳥羽温泉郷 しんわ千季 戸田家】

【今リポ!】今、伝えたい!最前線リポート Vol.010

環境意識の高まりを受けて、旅館ホテル業界でもSDGsへの取り組みを本格化させている施設が増え続けています。そんな中で時代を先取りするかのように、全国でもいち早く1992年から環境貢献活動を展開している旅館があります。

今回の今リポでは、伊勢志摩国立公園に位置する「しんわ千季 戸田家」の30年にわたる地域貢献・環境保護活動の歩みにスポットを当て、取締役業務支配人の宍倉秀明さんにお話を伺いました。



1.まだSDGsという言葉がない時代から取り組んできた環境貢献活動

-戸田家では30年も前から環境活動に取り組んでいますが、そのきっかけは何だったのでしょうか

この取り組みを始めたのは30年前の1992年のこと。翌年の伊勢神宮遷宮を控えて伊勢志摩のお客様が急激に増えた時期でした。宿泊はもとより朝食のみや昼食だけのお客様も増え、また団体客の宴会も多かったことから、毎日廃棄される生ゴミの量が非常に多く、日によっては300kgに上ることもありました。

この莫大なゴミのおかげで施設内のゴミ置き場は常にあふれかえってしまい、どれだけこまめに焼却処分しても追いつかず、さらにはカラスが大量に集まって周囲にゴミが散乱してしまうという鳥害も大きな問題となってきました。

景観の悪化や臭気などがお客様へのおもてなしにも悪影響を及ぼし始めたことで、この状況をどう改善するかは当時最大の悩みとなったわけです。

様々な方策を検討しましたが、この問題を根本的に解決するためには毎日出る生ゴミを自館内で処理するしかないという結論に達し、堆肥型の生ごみ処理機を導入したことが現在まで続く戸田家の環境活動のスタートとなりました。

▲生ごみ処理機


2.自館から出る生ゴミを責任をもって処理する

-生ゴミの堆肥化と飼料化を、新たな事業としても確立されていますね

この生ゴミ処理機で300kgの生ゴミを処理すると約100kgの有機肥料ができあがるのですが、今度はこの肥料をどう活用するかが次の課題となりました。もちろん自館の庭園などでも消費しましたがそれでも量が多すぎて使い切れないため、近隣の農家の方にぜひ肥料を使ってもらえないかと声をかけて廻りました。

当初は「戸田家が何か不思議なことをやっている」と訝しむ声の方が多く、なかなか受け入れてもらえなかったのですが、専門の研究所に肥料の成分分析を依頼し、そのデータを裏付けとして粘り強く交渉を続ける中で、少しずつ「試してみてもいい」という方が現れ始めました。

特に茶畑では強い肥料が必要なようで、栄養成分の高い戸田家産の肥料を試用してみたところ茶の葉の色づきもよく、成長も良いことが実証され、お茶農家の方々の中で少しずつ戸田家の肥料の評価が高まり、これを機に近隣の農家さんの間でもこの肥料を見直す気運がじわじわと広まっていき、やがて「野菜の成長がよくなった」「野菜や果実が甘くなった」などの声を頂戴するようになっていったんです。

またここ伊勢志摩地域では海産物の養殖が盛んですので、これを飼料としても利用できないかという発想も生まれ、再び飼料としての成分分析を行った結果、養殖用飼料に使用されるイワシに近い成分であることが判明したため、飼料の販売登録と生産を実施。近在の水産業者さんに声をかけながらこちらも少しずつ事業を拡大して、おかげさまで今日の状況にまで成長することができました。


3.地域環境に生かされている旅館ホテルとして

-環境貢献やSDGsについて、どんな想いをお持ちですか?

「自然に優しいは人にもやさしい」というのが、かねてからの戸田家の理念です。

私たちは世界的な観光地である鳥羽・伊勢志摩国立公園の玄関口に位置し、豊かな自然に囲まれた中で古くから営業を続けさせてもらっています。この最も重要な資産のひとつである伊勢志摩の自然を大切にしなければ、後世に対して申し訳がないというのが常に基本にあります。

とはいえ、当時は非日常の中でどれだけ贅沢な気分を満喫できるかというのが旅行の価値を決定づけている時代。いわば「無駄をするのが旅」という認識の頃でもあり、お客様からの賛同はなかなか得られませんでした。

そんな中、ある学生さんが戸田家の取り組みを耳にして、卒論のテーマに取り上げたいと調査に来られたことがあり、まだ少数派ながらもこうした取り組みに興味関心を抱いてくれる方もいるのだということが力強い心の支えになりました。

こうして徐々に私たちの活動が多方面に広まっていくにつれて、やがて全国や海外から視察に来る方も増え始めました。こうした変化の中で、少しずつ「環境と経営は両立する」という手応えを得てきたというのがこれまでの私たちの歩みです。

スタートから30年が経ち、当時とは比べ物にならないほどに環境への意識が高まっている今では、むしろ私たち宿側以上にお客様の方がより意識が高いというケースも増えてきましたから、時代の変化というものをいやが上にも感得させられます。


4.お客様第一主義、その本質を行動へ

-「4つのS」をコンセプトとしたECOプロジェクトは、今どんな広がりを見せているのでしょう

「4つのS」は戸田家の全従業員の共通認識であり、お客様第一主義を具体的な取り組みに落とし込んだ合言葉としています。

そのコンセプトに基づく私たちのECOプロジェクトの取り組みも、先に挙げた堆肥型生ゴミ発酵処理機で残渣を肥料化・飼料化し、地元有機栽培農家や地元漁協・農家などに提供しているのを皮切りに、省エネへの取り組みや温暖化対策、ひいては人材育成など、今では多くの分野に広がってきています。

また全国一級河川水質検査第一位の地元宮川の伏流水から、カーボン・オフセットによる「鳥羽サイダー」の製造もサポートし、この売上の一部を環境保護活動に寄付するなどの活動も展開しています。

こうした地道な環境貢献活動は行政にも認められ、現在では三重県ほか地域行政・地域の農水産業・大学などと連携した活動へと発展拡大し、「三重県ごみゼロプラン」のアドバイザーとしてご指名いただいたり、「三重県SDGs推進パートナー」の認証を取得したり、また2019年にはエコマークの表彰制度「エコマークアワード」で「エコ・オブ・ザ・イヤー」を受賞させていただくこととなりました。

▲三重県SDGs推進パートナー登録証

こうした諸活動を通して幅広い分野の方々との交流ネットワークが広がり続け、世の中の環境意識の高まりも追い風となったおかげで、一旅館の取り組みを全国的に広めていただくことができた結果、今では地元の皆様やお客様からもあたたかいご理解とご協力をいただけるようになってきました。


5.これからの旅館にとってのSDGsの重要性

-戸田家では現在どんな活動を進めていますか?

現在戸田家では本格的に古紙の回収リサイクルを推進すべく活動しており、行政にも働きかけた結果、伊勢市ではすでにプロジェクトが始動。また旅館組合でもこの取り組みをプレゼンで周知したことで、少しずつ活動の輪が広がってきているところです。

SDGsはその領域も多岐に渡るため「どこから手を付けていいかわからない」という声もよくお聞きしますが、旅館ホテルに留まらず、地域の皆さんがそれぞれの立場でできることから一つずつ始めていくことが何よりも大切だと思います。

各地の自治体でもSDGsの重要性に共感して様々な事業に取り組んではいますが、行政に任せきりにするのではなく、民間側でも自分の地域を今後どうしていくべきかという大きな課題として捉えていくことが肝心です。


-SDGsに取り組んでいる全国の方々へのメッセージをいただけますか

これまで様々な取り組みを展開してきた私たちの経験から僭越ながら一つだけアドバイスをさせていただくと、例えば生ゴミ処理に着手するのであれば、処理後にできたもののをどうするかまでを見渡し、スタートからゴールまでしっかりと計画立ててから実行に移すことをお勧めします。

環境意識の高まった今ではSDGsに関する理解者・賛同者も数多くいらっしゃいますので、皆さんがまず率先して動き、周囲に声をかければ必ず良い反応が得られてスムーズにネットワークが広がっていくことと思います。

ぜひ意を同じくする心強い仲間や協力者を見つけて、他の誰でもない自分たちの地域のために、また自分たちの宿の未来のために積極的に活動していってほしいと願います。

▶しんわ千季 戸田家

※2022/10/13公開の記事を転載しています


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