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「月岡温泉 空き家改装まちづくり事例」 2014年から毎年1軒、空き店舗を中心に


まずはテーマとコンセプトを中心に据え

地方の市町村はもとより、日本国内の観光地、温泉街の空洞化・過疎化は各地で大きな問題となっています。熱海温泉のように街ぐるみでの活性化を成功させ、V字回復を見せる観光地もある一方で、多くの温泉街は衰退に手をこまねいているのが現状ではないでしょうか。

しかし、魅力づくりと言ってもいったいどこから手をつけたらいいのか。

そのひとつの解決策として、「月岡温泉」の空き家改装事例をご紹介しましょう。

一軒の宿の改装も、その総体である大規模な街づくりも基本は同じ。まずはその地域らしいテーマとコンセプトを中心に据え、課題をひとつずつクリアしていくと言う当たり前のことが大切なのです。

温泉街の中に点在する空き家対策が喫緊の課題

月岡温泉は新潟県新発田市にある温泉地で、大正4年に開湯。美肌に効果があるとされる泉質は、磐梯熱海・いわき湯本と並び磐越三美人湯に数えられています。バブル期に年間120万人いたとされる観光客数はバブル崩壊後に半減。旅館のおよそ2/3が廃業しました。

2014年は月岡温泉開湯100周年にあたり、そのプロモーション事業コンペの際に、広報事業のほか、空き家(空き店舗)改装もテーマのひとつとして、コンセプトの提案を広く募りました。

以前から温泉街の空き家問題は観光協会の大きな課題のひとつだったからです。


こうしたアニバーサリーイヤーの流れの中で、月岡温泉の若手経営者の共同出資で運営会社「合同会社ミライズ」が設立されました。

「ミライズ」は温泉街の活性化を目指し、新潟をテーマとした温泉街に相応しい

お酒や米、お茶などのメイン商品と、商品を扱う店舗の確定、建物の雰囲気などを、他所を視察した際の写真などからイメージ。ざっくりとしたコンセプトの立案と販売計画、商品コンテンツ、内装イメージなどを想定します。事業費用はミライズ自身の拠出の他、パートナー企業の協賛、月岡温泉独自の街並み景観整備基金などで賄われています。

空き家対策は一軒ずつの空き店舗リニューアルから始まりました。少なくとも1年に一軒、空き家をコンセプトを持った店舗に改装しようという、地道な取り組みです。


リニューアル事業はまず、提携したリノベーションのプロによって具体化されたコンセプトを、パース(全景・内観、平面プラン)を含めた企画書に仕上げてもらい、数回パースの手直しを経ながら速やかに、工務店との打ち合わせに入ります。一方でロゴデザイン、サイン・POP制作やマスコミリリース、発表会のマネジメントなども進みます。

こうしたリノベーションのプロとの作業は、コンサルや設計のプロに相談するまでもない事案。できるだけ安く、でもセンス良く仕上げたい案件などに適していて、建築確認申請のいらない改装工事を、改装費も含めミライズが支払うというシステムになっています。

できるだけ安く、センス良く、効果のある改装を目指して

旅館の修繕やちょっとした模様替えを手がけている地元の工務店は、パース及び現調から簡易平面図を作り、詳細図面なしに見積もりし施工にかかります。施工は基本的に現場合わせで、迷った際には建築現場に施主を呼び、逐一確認を行い、写メで相談一斉メールが来るという簡易なシステムです。工期もざっくりと1ヶ月〜2ヶ月で、例年3月に施工に入り、ゴールデンウィーク前にオープンするスケジュールです。

温泉街では現在は6店舗目がオープン、将来的には10店舗まで続けたいと考えています。

「蔵」と名付けられた日本酒をテーマにした店舗は、空き家対策事業の1号店でした。一階が元まんじゅう店、二階が元スナックだった店舗を改装。それまで各酒屋に任せていた飲み歩きを一か所に集中させることを旨とした店舗で、600円で新潟90銘柄の酒をお猪口3杯飲めるのが大きなウリ。ほかにも日本酒などの関連グッズも販売し、改装店舗中で売り上げのトップを誇っています。

新潟発の発酵食品・干物を試食販売する「旨」、地元粟山米菓と共同でオープンした煎餅の「田」。お茶・ワインの「香」、新潟米の「米」、野菜・フルーツの「実」などが軒を連ね、現在では街を歩く若い観光客の姿が顕著に増え、活性化が進んでいることを実感します。

このほか、月岡温泉観光協会が主導となり、遊休地の活用として月岡温泉発祥の地の碑だけが立っていた空き地に「源泉の杜」。温泉旅館廃業に伴い更地となった土地に「月あかりの庭」などがオープンし、温泉街回遊施策の重要なポイントとなっています。

月岡温泉空き家改装事業は、リノベーション会社にとっても、何よりも街の活性化が主題であり、儲けを優先せず、ローコスト建築とオペレーションを旨としています。それでも、2019年ゴールデンウィークのある一日には改装店舗6つの合計が日商100万円を超え、また3月決算では毎年利益計上を実現しています。

また2019年先進的まちづくり大賞において国土交通大臣賞も受賞しております。


関連サイト▶「re:nova -リノーヴァ-」
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※2019/10/25公開の記事を転載しています


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