宿泊税とは?なぜ?|目的・入湯税を含めた導入自治体の使い道例を一挙公開
私たちがホテル・旅館などの宿泊施設や温泉施設を利用する際、地域によって宿泊税・入湯税を支払うことがあります。
宿泊税・入湯税がどの地域で何のために導入され、何に使われているかを知っておくと便利でしょう。
宿泊税とは
宿泊税とは、ホテルや旅館を利用する際の宿泊料金に応じて課税される税金のことです。
支払った税金は、各自治体の観光業において、サービスの向上や魅力の発信など、さまざまな用途で使用されます。
宿泊税は地域によって支払う税額が異なります。
例えば、東京都の場合は、10,000円以上15,000円未満の素泊まり料金で1人1泊あたり100円、15,000円以上は200円です。
全ての自治体が導入しているわけではなく、未導入の自治体もあります。
入湯税とは
鉱泉浴場への入浴で課税される税金を入湯税と言います。
鉱泉浴場は、人工の温水ではなく、地中から湧き出した温水を使用した天然温泉のことです。
利用者が支払う入湯税を、施設が自治体に納入しています。
入湯税は1人1日150円が標準ですが、自治体が自由に税額を決められる地方税です。150円より低額の場合や、サービスの合計額に応じて増額される場合もあります。
地域や施設による違いがあるため、事前に調べてみることもおすすめです。
なぜ?宿泊税・入湯税導入の目的
宿泊税・入湯税は、なぜ導入されたのでしょうか。
答えは、観光の振興です。
納められた税金の使い道が明確な税金を法定外目的税と言います。
宿泊税・入湯税は、観光業を盛り上げ、観光客の誘致や環境を整えるために作られた法定外目的税です。
法定外目的税は、自治体が抱える事情や課題から条例を制定し、地域ならではの税を設けられることが特徴です。
宿泊税・入湯税だけでなく、産業廃棄物税・資源循環促進税・環境協力税など、自治体によってさまざまな法定外目的税があります。
出典:総務省「15 法定外税の実施状況(令和3年度)」
【使い道・近況】導入済・検討段階の自治体まとめ一覧
宿泊税・入湯税は、導入済の自治体や、導入していない・検討している自治体があります。地域によって税額や使途もさまざまです。
宿泊税・入湯税がどのようにして進められているか、使途の例も含めて自治体ごとに見てみましょう。
なお、編集部で行ったリサーチの範囲ですが、使い道がしっかり書かれている自治体が少ない状況でした。特に、入湯税に関しては、同じような内容が多く見られました。
そのため今回は最低限、使い道が明記されている自治体を中心にピックアップしています。
1.釧路市|北海道
釧路市は以前から入湯税を導入しています。2024年まで入湯税の引き上げを行っており、宿泊税の検討にも乗り出しています。
2.仙台市|宮城県
仙台市では、宿泊税は未導入・入湯税は導入されています。
※秋保とは、「日本三御湯」の秋保温泉を有する仙台屈指の観光地です。
3.浦安市|千葉県
浦安市には東京ディズニーランドがあり、観光客は年中絶えません。
老朽化した道路の整備や、観光客からの救急要請への対応など、設備を充実させる必要があります。
4.横浜市|神奈川県
神奈川県では、観光客の推移に偏りがあります。
入湯税は導入済みですが、宿泊税の導入は宿泊施設への負担や入湯税との調整もあり、慎重な姿勢です。
5.熱海市|静岡県
熱海市は、国内旅行・インバウンド問わず人気の観光地です。
宿泊税の導入も決定し、イベントの開催や施設整備への期待が高まります。
6.金沢市|石川県
金沢市では、2019年4月1日より宿泊税が導入されました。
2024年10月より、1人1泊5,000円未満の宿泊利用には課税されなくなります。
7.京都市|京都府
京都市では、2018年10月1日より宿泊税が導入されました。
主に国際観光都市としての魅力向上のために充てられています。
8.神戸市|兵庫県
神戸市は、インバウンド需要が高い大阪や京都に比べて宿泊施設に余裕があるため、宿泊税の導入の予定はありません。
日帰り利用の入湯税を引き下げることで、観光客の誘致を目指しています。
9.長崎市|長崎県
長崎市では、2023年4月1日より宿泊税が導入されました。
「日本新三大夜景都市」に選ばれた夜景や世界遺産を有しているため、維持・運営費や整備、プロモーションなどに充てられています。
使途では、令和6年度の活用事業に初めて、「オーバーツーリズム対策警備実施」の項目が記載されていることにも着目です。
10.北九州市|福岡県
北九州市では、2020年4月1日より宿泊税が導入されました。
「ジ アウトレット北九州」をはじめとする新たな観光施設や、食・文化・歴史などの観光資源を多数有しているため、観光需要の向上が期待できます。
まとめ
宿泊税・入湯税は、私たちが観光を楽しむために必要な税金です。
コロナ禍以降の観光需要の回復により、施設の整備やプロモーション活動など、まだまだ費用の確保を要する地域は多数あります。
旅行で訪れる地域が宿泊税・入湯税を導入しているかを事前に知っておくことで、スムーズな料金支払いやトラブル防止につながるでしょう。
今回のリサーチによって、宿泊税・入湯税導入の動きは、コロナ前の2014~2015年(平成26~27年)あたりからあったことが分かります。
また、観光行政や観光振興事業に携わる方にとっては、コロナ禍で議論が一度ストップしたものの、昨今復活の兆しを見せています。
加えて物価高騰というトピックに、事業者側は懸念されている面があるものの、多くの自治体では「世間の目は以前よりもポジティブだ」という声も。
このGWではインバウンドの完全復活に伴い、オーバーツーリズムの問題がニュースで取り沙汰されました。
ぜひそうした課題解決にも、宿泊税・入湯税が有効利用されることを願ってやみません。
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